《5》音色に作用する要因要素群について
設計要因要素群 O(a,b,c,d,〜)
設計の違い、または各部分の設計を変更することによって音色は違ってくるが、これらの
要素の集合を表す。例えば低音弦の長さ、響板の大きさなり形状、アリコートの有無、ア
グラフの有無など、その他無数に存在する。
材料要因要素群 M(a,b,c,d,〜)
使用される材料の種類と品質の違いからくる音色の変化を表す要素の集合を表す。例えば
ハンマーヘッドの品質の違い、シャンクの違い、響板ニスの違い、外装の塗装材料の違い、
鉄骨の成分による違いなど。
整調要因要素群 A(a,b,c,d,〜)
アクションの各部分の調整による音色変化要因の集合を表す。Aによる音色の変化は甚だ
しいので整音作業前には細心の注意が必要である。例えばドロップスクリューを少し廻し
ただけでもf、R、が変化してしまうし接近の少しの違いでもf、dが変化してしまう。
この群には整音前の準備整調も含める。弦のレベル調整が甚だしくずれている場合にはで
負に働くe´が生じる。この要因要素群の中には無数と言ってよい程の要因要素が存在し、
音色要素としては前回述べた音色要素(θ〜v)に含まれない静体音色要素群(Π)の要素
が多数含まれる。これを理解するには完璧な整音作業が施された品質の高い世界的名器で
ないと困難である。整音作業を施すことにより極めて美しい音色が得られるがそれに伴い、
整調要因による音色の変化が激しくなり、頗るデリケートなピアノに変身する(表現力の増
加)山の頂点が高く鋭く幅が極く狭いと言うことだ。名器ほどタッチによって音色が変化
するのはこの事実からくるものである。
打鍵要因要素群 H(a,b,c,d,〜)
ハンマーヘッドが弦を叩く時の速度、加速度、およびキーにかかった重量とハンマーヘッド
が弦を叩く速度の積などの違いによって音色が変化する要因の集合を表す。
調律要因要素群 T(a,b,c,d,〜)
さきほど説明したeの変化、ピッチの違いなど、調律作業によって音色が変化する要因の
集合を表す。
環境要因要素群 I(a,b,c,d,〜)
ピアノが置かれている環境の違いにより、音色が変化する要因の集合を表す。例えば温度、
湿度、室内の音響特性、インシュレーターの種類、椅子の構造、弾く人の体格などの違いに
よるもの。
O〜I以外の要因要素群 Φ(a,b,c,d,〜)
この要素群は私にはよく解らないが一つだけ不思議な事実がある。ピアノ各部にヒーリン
グを施すと音色がまろやかになりノイズィーな音が減少する。何故このような現象が起き
るのか私にとってはは全く不可解な現象である。